釣り人の特権。
生ダコで炊くタコ飯と、一杯まるごと楽しむたこぶつ
スーパーに並ぶタコは、その多くが「足だけ」。しかも加熱・味付けされた状態です。
東京湾で釣ったマダコは、生きたまま一杯まるごと。生の皮も、太い足も、吸盤も、メスなら卵巣も持ち帰れます。
だから料理の入り口から違います。ここでは、その一杯を余さず楽しむコツをまとめました。
- ・シーフード創作料理を得意とする
- ・尊敬する人はインドカリー子さん

釣ったタコが特別な、3つの理由
赤は「皮」から出る
タコの赤い色は、皮(表皮)にある色素です。
ボイルだこは、ゆでた時点で色も旨みも湯へ抜けたあと。
皮ごと生で持ち帰れる釣り人だけが、炊いて赤を出せます。
一本の足に、二つの食感
同じ足でも、先端は繊維が細くやわらか、根元は太くて弾力があります。
「足だけ」を買うスーパーでは、この差を選ぶことはできません。
オスとメスは、腕でわかる
オスは腕の一本だけ吸盤が途中で消え、先がヘラ状(交接腕)になります。
メスは全部の腕に吸盤がそろいます。
見分けられるから、釣り上げた時点で献立を決められます。
今日は何を作る?
釣れた一杯を見て、これだけ決めればOK。
骨がなく丸ごと使える。1杯で約2合分にちょうどいい。
厚みがあるほど“薄造り”が映え、甘みが立つ。
小さく火が早い。揚げると香ばしさが出る。
淡白でクセがあるぶん、濃い味で化ける。
味を決めるのは、下ごしらえ
生ダコは、ここで9割決まります。買ってすぐ使えるボイルだこには無い、生ならではのひと手間です。
ぬめりは「冷凍→水で解凍」
一度冷凍し、水で解凍しながら洗い流すと、塩を使わなくてもぬめりが簡単に、きれいに取れます。塩もみより手軽で失敗しにくい方法です。
冷凍は身も柔らかくする
凍らせると繊維がこわれ、茹でる料理では生から茹でるより柔らかく仕上がります。ぬめり取りと合わせて、冷凍はいいことづくめ。
茹でるなら「足先から」
茹でる料理(たこぶつ等)は、熱湯に足先から少しずつ入れると足がきれいに丸まります。ゆですぎは硬くなるので小型は数分・大型でも7〜8分。※タコ飯は下茹でせず、生のまま炊きます。
部位で変わる、タコの「顔」
一杯まるごとだからこそ、部位の違いで遊べます。
足先
火の通りが早い。刻んで炊き込みや唐揚げの“つなぎ食感”にすると生きる。
太い足
弾力があって食べ応え抜群。太さそのものが大型ダコの醍醐味。
頭(胴)
実は身がやわらかくクセがない、隠れた主役。子ども用や刺身風に向く。
吸盤
身とは別の独立した“コリコリ”。大ダコほど吸盤も大きく、単体で一品になる。

生ダコで炊く、釣り人のタコ飯
同じ米が、
タコ一杯で“ごちそう”に変わる。


下茹でしない。生のまま炊く
タコ飯は下茹で厳禁。生のまま米にのせて炊くから、旨みと香りがそのままご飯へ移ります。先に茹でると、その旨みが湯へ逃げてしまいます。
生は縮む。だから大きめ
生ダコは炊くとぐっと縮みます。切るときは“大きめ”にすると、炊き上がりにちょうどよい存在感になります。
しょうがは“多め”が正解
臭み消しだけでなく、冷めても後味を締めます。せん切りをたっぷり。おにぎりにしても効きます。
材料 2合分
- 米
- 2合
- 生ダコ
- 150〜200g
- しょうが
- 1かけ(多め)
- 醤油
- 大さじ2
- 酒
- 大さじ1
- みりん
- 大さじ1
- 昆布
- 5cm程度
- 水
- 2合の目盛りまで
- 仕上げ
- 大葉・小ねぎ・白ごま
作り方
- 1米を研ぎ、30分ほど浸水する。
- 2生ダコはぬめりを落とし(前項)、下茹でせずそのまま使う。
- 3身は炊くと縮むので、やや大きめに切る(足先は食感づけに小さめでも可)。
- 4炊飯器に米、醤油、酒、みりんを入れる。
- 5水を2合の目盛りまで入れ、昆布をのせる。
- 6生のタコとしょうがをのせて炊く。
- 7炊き上がったら昆布を外し、10分ほど蒸らしてさっくり混ぜる。
- 8大葉、小ねぎ、白ごまを添える。
タコ飯の主役は、実はご飯です。タコを入れすぎるより、旨みを米に移すことを意識してください。
生から炊けるのは釣り人だけ。下茹でせずそのまま炊くのが、旨みを逃がさない一番のコツです。
薬味で遊ぶ、刺身風たこぶつ
切って終わりじゃない。
薬味で、一皿が何度も変わる。
ここでの刺身風は「生食」ではなく、加熱したタコを刺身風に切って楽しむ料理です。

薬味で“味変”する
王道。タコの甘みを素直に感じる。
さっぱり。夏場や大きめの身に。
柚子胡椒は香り、ごま油塩はおつまみ向き。
冷やしすぎると身が締まりすぎます。食べる少し前に常温へ戻すと、甘みが出ます。
材料 2人分
- 茹でたタコ
- 150〜200g
- わさび
- 適量
- 醤油
- 適量
- ポン酢
- 適量
- 柚子胡椒
- お好みで
- みょうが・大葉
- お好みで
- ごま油+塩
- お好みで
作り方
- 1下ごしらえ・下茹でしたタコを用意する。
- 2部位ごとに切り分ける(太い足は薄め、足先は厚め、吸盤はそのまま)。
- 3器に部位ごとにかたまりで盛る。
- 4薬味は一度に全部、小皿で添える。
- 5「部位 × 薬味」で食べ比べる。
たこぶつは“盛り”も味のうち。部位ごとにかたまりで盛ると、食べ比べが楽しくなります。
薬味は最初に全部出すのがおすすめ。同じタコが、口に運ぶたびに違って感じられます。
取れたらラッキー、釣り人の“裏メニュー”
数は少ないけれど、知っていると一杯を最後まで楽しめます。
卵巣(真子)
マダコの卵を塩ゆでしたものは“海藤花(かいとうげ)”と呼ばれ、明石などの名物。もちろん十分な加熱が前提です。
スミ
マダコの墨はイカより少なく、サラサラで水っぽい。濃厚なスミ料理には不向きなので、リゾットの色づけ程度に“遊ぶ”のが現実的です。

注意書き
この記事では、釣ったタコを家庭で楽しむための料理アイデアを紹介しています。
生ダコを使う料理でも、タコ飯は加熱して食べる前提です。刺身風たこぶつは、基本的に加熱したタコを使う想定です。
内臓、卵巣、スミを使う場合は状態をよく確認し、におい・色・鮮度に違和感がある場合は使わないでください。
真夏や長時間移動の場合は、保冷にも注意してください。